【空き家・空き地を手放したい】その1 相続放棄・相続土地国家帰属法 ~墨田区で長年相続手続きをしている司法書士がご説明します~

query_builder 2023/01/01
相続放棄

こんにちは
今回は、利用価値が見いだせない「空き家や土地」について、自分が所有者となってしまった場合にどうすれば良いのか、所有権を放棄して負担から逃れることができるのか、についてお話ししたいと思います。

防災、防火、防犯、衛生、環境などの観点からも、空き家の放置はとても危険です。管理不十分が原因で、犯罪や事故や失火の要因となった場合、損害賠償責任を問われかねません

しかし、所有者・居住者の死亡などにより相続したものの、管理コストがかかる一方、財産的価値は低く譲渡先も見当たらないような物件の場合、相続人間での話し合いもまとまらず、そのまま放置されてしまうことも少なくありません。

さて、運悪く自分が、財産的価値の低い不動産の相続人の一人となってしまった場合には、どうすれば良いでしょうか。

家庭裁判所で相続放棄の手続きをする

男性会話

最も効果的な方法が、家庭裁判所での相続放棄手続です。
家庭裁判所で相続放棄が認められれば、当初から相続人ではなくなりますので、一応安心です。


一応と書きましたのは、現在の条文では、
「その放棄によって相続人となった者が、相続財産の管理を始めることができるまで、管理を継続」することが求められているからです。


なお、法改正により、令和5年4月1日からは、「現に占有しているとき」は次の相続人などに引き渡すまでの間は保存責任があるとなっていますので、まったく知らない物件などの場合は、安心して良いことになります。


相続人全員が相続放棄して相続人が不在となった場合、相続財産管理人が選任され、様々な手続きを経て、残った財産は最終的に国庫に帰属することになります。


では、自宅や預貯金などの遺産もあり、相続放棄が得策ではない場合はどうでしょうか。
家庭裁判所の相続放棄は、相続権そのものを放棄することですので、空き家だけ相続したくない場合には使えません。


次は、相続した(してしまった?)空き家・空き地の処分、譲渡を検討してみましょう。

相続した空き家・空き地の処分、譲渡を検討する

不動産業者等による管理、仲介の相談

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相続した空き家の処分、譲渡については、次のような方法があります。

一つ目は、不動産業者等へ管理や仲介の相談をする方法です。
最も一般的な手法で、地元に詳しい不動産業者などに管理や処分の相談をします。

不動産業者だからこその情報もありますので、まずは試してみたい方法です。

不動産業者等による買取

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不動産業者等に手数料を払って、物件を引きとってもらう方法があります。
不動産業者等に所有権が移転しますので、今後の負担はなくなります。
不動産業者等は、今後管理・処分の負担を負うことになりますので、通常、不動産業者等には数十万円から数百万円の手数料(負担料)を支払います。


必ず所有権移転登記を入れることが重要です。
登記が移転しないと、対外的には所有者のままとなって責任が残ってしまいます。

空き家バンク制度の活用

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空き家バンク制度というものがあります。 

空き家バンク制度は、各自治体で行われている不動産のマッチングサイトです。

自治体のサイトに空き家の売りたい、買いたい、貸したい、借りたい情報を登録し、お互いが相手を探すというものです。

自治体は情報の掲載場所を提供しているだけですので、実際の取引の際は不動産業者等の専門家に間に入ってもらうことになります。

自治体等への寄付

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自治体へ寄付したいという要望があります。

これは自治体にとってかなりメリットがある場合以外は難しい方法です。ダメでもともとで相談することになります。


似たようなものに、令和5年4月27日にスタートする相続土地国家帰属法がありますので、次にお話したいと思います。

相続土地国家帰属法のスタート(令和5年4月27日予定)

相続土地国家帰属法とは

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今後人口や世帯数の減少が予想されるなか、

ますます空き地が増加する恐れがあり、
国としても管理不十分な土地をこれ以上放置するわけにいかないとして、


国が一定の要件を満たした場合に限り、放棄した土地を国庫に帰属させることになりました。ただし、土地だけが対象で建物は対象外です。

まだ制度運用前ですので、今後の成り行きを見ていかなければわかりませんが、
権利関係も土地の状況も問題なく今すぐ譲渡できる状況ではあるが、

所有するメリットが見いだせず、引き取り手がどうしても見つからない物件

例えば放置された森林、原野、農地などがこの制度の対象となりやすいように思えます。


それでは、この制度について簡単に説明します。

相続人が申請します

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手続きできる人は、「相続人」です。 

売買や贈与などで取得した人は対象外です。

共有の場合は、共有者全員で申請します。
共有者の一人が相続で取得していれば大丈夫です。

法務大臣(法務局)による審査・承認手続き

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法務大臣(法務局)による審査・承認手続きがあります

。 

そして下記のような場合、却下または不承認となります。

ざっくり言いますと、「管理、処分しやすい土地」だけ、受け付けます! ということです。


〇建物が建っている土地⇒×(更地であること)

〇担保権など他人の権利がついている土地⇒×

 (所有権のみであること) 

〇道路や水路など他人の使用が予定されている土地⇒×

〇特定有害物質に汚染されている土地⇒× 

〇境界や所有権に争いがある土地⇒×

〇その他管理、処分に過分の費用や労力を要する土地⇒×
この例として挙げられているのは
・崖がある土地

・工作物などの有体物がある土地(地下も含む)

・隣接所有者に通行を妨害されているなど訴訟しなければいけない土地
・災害被害防止の必要がある土地

・鳥獣被害がある土地

・追加整備が必要な土地

・国が追加的に費用負担する土地

・国が金銭債務を承継する土地

などです。

負担金を納付

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晴れて承認となりましたら、承認通知から30日以内に、負担金を納付します。  

負担金は
「土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額」とされておりまして


例えば、
〇市街化区域外・用途地域指定区域外の宅地の場合、

 面積に関わらず20万円
〇市街化区域・用途地域指定区域内の宅地(100㎡) 

 の場合、548,000円
〇農用地区域内の農地(100㎡)の場合、

 329,000円
〇農用地区域内の農地(1,000㎡)の場合、

 1,128,000円
〇森林(100㎡)の場合、215,000円
〇森林(1,000㎡)の場合、261,000円


などとなります。

国庫に帰属(所有権移転登記)

男性閃き

審査、承認、負担金の納付手続きを経て、空き地が国のものになります。
所有権移転登記が行われ、国庫に帰属します

まだ制度運用前ですので、今後の成り行きを見ていかなければわかりませんが、
放置された森林、原野、農地などがこの制度の対象となりやすいように思えます。
市街化区域内の宅地などは
民間での引き取り手がいない場合に
検討することになるのではないでしょうか。
 
今後の動きなど法務省のサイト等で確認していきたいと思います。   

     ↓
法務省:相続土地国庫帰属制度について (moj.go.jp)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html

相続のお手伝いは司法書士事務所へ依頼ください ~墨田区・江東区で相続中心の司法書士事務所~

男性会話

今回は、相続における空き家・空き地への対応についてお話しました。
〇相続放棄
〇不動産業者、空き家バンクの活用
〇相続土地国家帰属法

など十分とは言えませんが、色々な方法があったかと思います。

東京法務局墨田出張所近くで、
2007年から司法書士事務所をしています。
相続のご相談もたくさん受けております。

是非お気軽にご相談ください。


関連ブログはこちら

相続放棄には家庭裁判所の手続きが必要です①

相続放棄には家庭裁判所の手続きが必要です②

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