【配偶者居住権】残された配偶者を守る遺産分割・遺言  その2~墨田区で長年相続手続きに関わってきました司法書士がご説明します~

query_builder 2023/05/07
相続登記遺言書

こんにちは


前回に引き続きまして

残された配偶者の生活を守るための相続、

特に「配偶者居住権」を中心に


お話します。

配偶者居住権とは

要件は

男性閃き

1 被相続人の配偶者だけが利用できる権利です。


2 対象は被相続人の財産に属した建物で、配偶者は相続開始時にその建物に居住していたことが必要です。


3 遺産分割協議、遺贈、死因贈与によって、この権利を取得できます。

権利内容は

男性閃き

1 「無償」で「建物の全部」を「使用収益」できます。


2 建物の使用収益に必要な範囲で敷地を利用できます。


3 存続期間は、原則として相続発生時から配偶者死亡までの終身です。
  「〇年間」といった具体的な期間を設定することも可能です

検討事例

相続内容

前回のケースを詳しく検討してみましょう。

Aさんは配偶者Bさんを先日突然亡くしました。(遺言がありませんでした)


Bさんは再婚で、前妻との間に長男のCさん(成人)がいます。


なお、AさんとCさんとの間には親子(養子養親)関係はありません。


Bさんの相続人はAさんとCさんで、法定相続割合は各2分の1です。


Bさんの遺産は自宅の自宅マンション(評価額30百万円)、預貯金(10百万円)でした。

さて、Aさんは引き続き自宅マンションでの居住を希望していますが、
もしCさんが法定相続割合とおりの相続(各2000万円の相続)を希望した場合、
配偶者がそのまま住み続けるためには、どのように遺産分割すべきでしょうか。

遺産分割案

配偶者がそのまま住み続けるためには

(1) 建物の所有者になる(所有権を相続する)
(2)(新しい)建物所有者Cさんとの間で賃貸借契約を結ぶ
(3)上記の折衷案
(4)配偶者居住権を設定する

といった方法が考えられます。

(1)建物所有者となる

男性教える

(1)の建物の所有権を相続する方法は一番権利が強いと言えますが、デメリット・注意点として、


土地建物を相続した場合、通常不動産の評価額は高いので、他の財産(今回は預貯金)の相続分が減る可能性があります。


今回の例では、自宅マンションの評価額は30百万円ですので、10百万円多く相続することになってしまいます。

よって、AさんはCさんに10百万円を支払う必要が生じます。

自宅は確保できたものの、生活資金を10百万円も減らすことになってしまいました。


また、Cさんがこのマンションの所有権を希望している場合には、Aさんとの間に親子関係がなく、将来相続できないため、合意は難しいかも知れません。

(2)賃貸借契約

男性教える

(2) 建物名義を取得せず、建物所有者との間で賃貸借契約を結ぶ方法はどうでしょうか。

自宅マンション名義をCさんが取得しますと、

(1)とは逆にAさんが10百万円の預金全額を相続し、CさんからAさんに10百万円の支払いが受けられる可能性があります。


しかし、Cさんがマンションを第3者に売却してしまった場合、Aさんが住み続けるのは困難です。


賃貸借契約を結べば引き続き住み続けられますが、適正な賃料を払う必要があります。


また賃借権の付いた不動産は売却額が下がる可能性がありますので、Cさんが賃貸借契約を結ぶかどうかわからないということも考えなければなりません。

(3)共有者となる

男性教える

折衷案として
土地建物をAさんとCさんで共有する方法はどうでしょうか。


以上のような遺産分割がされた場合
不動産が共有の場合、建て替え・売却・賃貸の際、他の共有者の同意が必要となります。


また、Aさんが単独で使用する場合には、Cさんに対し賃料を払うこともあるでしょう。

これではAさんの安定した生活が望めないかもしれません。

(4)配偶者居住権

男性閃き

以上のような状況を踏まえて、


居住用不動産の「所有権」ではなく、ずっと住み続けられる権利である「配偶者居住権」というものが創設されました。


居住権とは、建物の居住権だけでなく、その建物のための敷地利用権を含みます。


評価方法は少し難しいので今回は省略しますが、当然ながら「所有権」よりは低い金額となります。

配偶者居住権は、所有権より財産評価額が低くなる。
⇒他の相続財産の取得割合も増える可能性がある。
と同時に、

建物および土地使用も無料である。   

⇒賃料を支払うことなく、居住権を確保できる 


という特徴をもった権利です。
  
例えば、居住権の評価額が20百万円であった場合、Aさんは居住権(20百万円)を取得し、Cさんはマンションの所有権10百万円(30百万円-20百万円)+預貯金10百万円を取得することになります。


以後Aさんは無償で土地建物を使用することができます。

なお、この配偶者居住権は、配偶者のみに認められた権利でありまして、他人に譲渡をすることはできませんし、配偶者が死亡したときは消滅します。


また、配偶者居住権は登記をしませんと、第三者にその権利を主張することができませんので注意が必要です。

配偶者居住権の登記

建物所有者の登記

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前提として、建物所有権を遺贈、又は遺産分割協議で配偶者以外の相続人等に変更します。

配偶者居住権の設定登記

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そして、建物所有者との間で「配偶者居住権」設定の登記申請を行います。建物所有者には登記義務があります。

特約の登記

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建物所有者の承諾があれば、建物を第三者に使用収益させることができますので、特約としてその旨の登記をすることもできます。

抹消登記

男性教える

配偶者が死亡した場合、建物所有者が単独で抹消登記を申請することができます。


配偶者の生存中に合意などで抹消登記をする場合は、配偶者と建物所有者との共同申請となります。

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まとめ

今回は、残された配偶者の生活を守るための相続について、特に「配偶者居住権」の内容についてお話してみました。

遺産分割協議は、遺産の内容、当事者の関係性、生活状況などにより合意に至るまで難航することもあります。


円満な相続につながるよう遺言などの生前対策を検討してみてはいかがでしょうか。

東京法務局墨田出張所近く

東京法務局墨田出張所近くで、
2007年から司法書士事務所をしています。
相続のご相談もたくさん受託してきました。

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